山岳遭難で最も多いのが道迷いですが、道迷いの多くは、下山中に発生しています。
下の図は、雲取山の地形図です。赤い線は、尾根線です。
このように、下山中には、登るときには気づかないような稜線上の分岐がたくさん現れるのです。
気付かないうちに間違った尾根線に進んでしまい、道に迷ってしまうというケースは、道迷い遭難の典型的なパターンです。
また、下山時は疲労で集中力が低下していたり、日没を意識して焦っている場合もあります。
こういったことも、下山時の事故が多い要因のひとつです。
何よりもまずは道に迷わないことが一番ですが、万が一道に迷ってしまった時の正しい対処法について説明します。
1 道が分かる所まで引き返す
登山中に道がおかしいな、と感じたらとにかく道が分かる所まで引き返します。鉄則です。
しかし、実際はこの引き返すという行為に抵抗を感じる人が多いのです。
特に下山の時は、下ってきた道をまた登らないといけないので、「なんとかしてこのまま元のルートに戻れないか」と考えて、どんどん先に進んでしまいます。
そして、ますます迷ってしまうのです。
手遅れになる前に、少しでも道の違和感に気づいたらすぐに引き返しましょう。
それでも手遅れになってしまったときは、
2 尾根線(稜線上に出る)
とにかく尾根線を目指します。
道に迷ったら、何とかして下山しようと下の方へと向かいがちになり、つい沢に下りてしまいがちですが、逆です。沢に下るのは一番やってはいけない行動です。
迷ってしまったら尾根線(稜線上)にでます。
尾根線に出る理由としては、
〇尾根線は登山道がある場合が多い
〇携帯の電波が入りやすい
〇ヘリコプターに発見されやすい
〇周囲がよく見えるので、現在地を特定しやすい
など、いろいろなメリットがあるからです。
一方で沢へ下ると、
●滑落の危険が高まる
●滝にぶち当たると先に進めなくなる
●電波が入りにくい
●ヘリコプターに発見されにくい
●樹林帯の中なので、周囲の様子が分からず現在地を特定しづらい
など、たくさんのデメリットがあり、助かる確率も下がってしまいます。
道に迷ったら尾根線に出る、これは超重要です。
しかし、分かっててもつい沢に下りてしまう遭難者が後を絶たないが現状です。
地図やコンパスは道に迷う前に使うもの
勘違いしている人も多いですが、地図やコンパスは道に迷ってしまってから使っても、全く役に立ちません。
なぜなら、道に迷ってしまってから地図を見ても、現在地を特定することが極めて困難だからです。
地図やコンパスは、道に迷わないために、現在地や進行方向の確認のために使うのです。
一方で、GPSはたとえ電波の入らないところでもほぼ正確に地図上に現在地を教えてくれます。
(※地図があらかじめGPS機器にダウンロードされている必要があります。)
なので、登山の前に、登る山の地図をスマホなどにダウンロードしておくと、電波が入らないところでも地図上の現在地が分かり、非常に便利です。
今はスマホアプリで簡単に地図もダウンロードできるので、スマホでのGPSの活用を強くお勧めします。
注意点として、たとえGPSを携行しても、地図とコンパスは必ず携行しましょう。
紛失やバッテリー切れ、突然の機器の不具合など、山では何が起こるかわかりません。
昨今の登山ブームで登山人口も段々と増えていますが、その分遭難者も増加傾向にあります。
安全な登山を楽しみましょう!