
次に、セキセイインコの性別の遺伝子について見ていこう!

性別?オスかメスかが、ボクたちの模様や色に何か関係してくるの?

その通りだ!大きく関わってくるぞ!
例えば、全身黄色のルチノーや、全身白のアルビノといった品種は、圧倒的にメスが多いんだ!

そう言われてみると、ボクの周りも、ルチノーの子はメスばっかりだピ。
偶然かと思ってたけど、そうじゃないんだね。
ZとW、2つの染色体
セキセイインコの性別を決定するのは、ZとWの2つの性染色体です。
染色体とは、たくさんの遺伝情報が詰まったDNAの束のことです。
オスはZの性染色体を2つ(ZZ)、メスはZとWの性染色体を1つずつ(ZW)持っています。
前回の色の遺伝子と同様に、子は両方の親から性別の遺伝子をひとつずつ受け継ぎます。
親から引き継いだ、子の性染色体の組み合わせは以下の4通りです。

ZZの組み合わせを持つものがオス、ZWの組み合わせを持つものがメスになります。
オスとメスが生まれてくる確率はそれぞれ2分の1で、半々ですね。

前回の色の遺伝と同じだね。

そうだな!
だが、ここからちょっとややこしくなるぞ!
分かりやすく解説するからついてきてくれ!

ピピピッ!
伴性遺伝子
伴性遺伝子とは性染色体に依存する遺伝子のことで、Zの染色体にのみ含まれています。
Wの染色体には含まれていません。
伴性遺伝子には、オパーリンやシナモン、イノ(ルチノーとアルビノのこと)の遺伝子などがあり、これらは伴性劣性遺伝であることが分かっています。

うん。何が何だか全然分からないピ。

よし、それじゃあ分かりやすく説明していこう!
具体例を挙げて考えていきましょう。
まず、オスのルチノーの染色体の組み合わせを考えてみます。
性別はオスなので、性染色体の組み合わせはZZですね。
そして、ルチノーは伴性劣性遺伝です。
この伴性劣性遺伝とは、伴性遺伝であり、さらに劣性遺伝であるということです。
伴性遺伝の情報は、Zの染色体に詰まっているんでしたね。
なので、分かりやすくするために、ルチノーの伴性遺伝の情報が詰まったZ染色体を、Z(L)と書くことにしましょう。
ルチノーの伴性遺伝子Z(L)は劣性遺伝で、Z(L)が2つ揃わないと見た目には表れないので、オスのルチノーは、Z(L)Z(L)という組み合わせになります。

もし、Z(L)が1つしかない場合はどうなるのでしょうか。
例えば、Z Z(L)の組み合わせの場合は、ルチノーにはならずノーマルになります。
ルチノーは劣性遺伝なので、Zのノーマル遺伝子がZ(L)の遺伝子に勝ってしまうからです。
ただし、見た目はノーマルですが、Z(L)の遺伝子は隠し持っているので、スプリットということになります。

次にメスのルチノーについて考えてみます。
メスの性染色体の組み合わせは、ZとWでした。
そして伴性遺伝子はZ染色体にのみに含まれますので、Z(L)Wという組み合わせになります。
これでメスのルチノーの完成です。

ここで大事なことは、オスの場合はZ(L)の遺伝子が2つ必要でしたが、メスの場合はZ(L)の遺伝子が1つでルチノーになるということです。
Wはあくまで性別のみを決定する染色体で、性別以外には何の影響も与えません。
これが伴性遺伝です。

難しい用語がたくさん出てきたけど、なんとなくわかったよ。
でも、これがなんでルチノーはメスが多いってことになるの?

そうだな、それじゃあ実際に色々なパターンを例に挙げて考えてみよう!
ルチノーの遺伝
それでは、ルチノーの子が生まれる様々なパターンを見ていきましょう。
大前提として、ノーマルのオス(ZZ)とノーマルのメス(ZW)の子は必ずノーマルになります。
ルチノーの子が生まれるには、最低でも両親のどちらかがルチノーの遺伝子を持っている必要があります。
パターン1
まずは、両親がともにルチノーの場合です。

この場合は単純で、生まれてくる子はオスもメスも必ずルチノーになります。
パターン2
次は、オスはノーマル(ZZ)、メスはルチノー(Z(L)W)の組み合わせです。

この場合、子はオスもメスも必ずノーマルで、ルチノーの子は生まれません。
オスは、ノーマルですが、Z(L)の遺伝子を隠し持っているのでスプリットです。
メスにはスプリットは存在しません。
パターン3
次に、オスがルチノー(Z(L)Z(L))、メスがノーマル(ZW)の組み合わせを考えてみましょう。

この場合、ルチノーが生まれてくる確率は2分の1ですが、オスは必ずノーマルになります。
ただしZ(L)の遺伝子を隠し持っているので、スプリットですね。
そして、メスの場合は必ずルチノーになります。
なので、生まれた子がノーマルかルチノーかで、性別まで判別できてしまいます。
パターン4
次に、オスがルチノーのスプリットを持ったノーマル(ZZ(L))、メスがルチノー(Z(L)W)の組み合わせです。

この場合も、ルチノーが生まれる確率は2分の1ですが、今回はオスとメス、ともにノーマルとルチノーが誕生する可能性があります。
なので、ノーマルかルチノーかで性別を判断することはできません。
パターン5
最後に、オスがルチノーのスプリットを持ったノーマル(ZZ(L))、メスがノーマル(ZW)の組み合わせです。

この場合、ノーマル同士の組み合わせなので、一見するとノーマルの子が生まれてきそうですが、なんと4分の1の確率でルチノーが生まれます。
そして、そのルチノーの性別は必ずメスになります。
オスは、ノーマルしか生まれませんが、ノーマル(ZZ)とスプリットのノーマル(ZZ(L))の2つの可能性が考えられます。
スプリットか、そうでないかは、残念ながら見た目では判別できません。
これまで5つのパターンを紹介しましたが、ルチノーのオスが生まれる組み合わせは3つでした。
一方で、ルチノーのメスが生まれる組み合わせは6つもありました。
このことからも、ルチノーはメスが生まれやすいことが分かるでしょう。
今回の例ではルチノーを取り上げましたが、オパーリンやアルビノも同様に伴性劣性遺伝なので、オパーリンやアルビノも、メスの方が生まれやすいということになります。

うーん、なんだかとっても複雑なんだね。

そうだな!
でもここまでわかったら、セキセイインコの遺伝の基本はマスターしたも同然だ!